昨年度の大きな転換点は、書籍の出版と同時に、薬をやめたことだった。薬と言っても、麻薬ではなく、「ゼプリオン」という統合失調症の治療薬である。
医学的には不十分な説明だろうが、この疾患は、ドーパミンが過剰に分泌されることが大きな要因であるため、それを抑制するために、この薬を筋肉注射するということになる。
この疾患の原因自体が、解明されたとは言いがたいようなので、精神科医も投薬の量については、患者との対話を通じて決めているようであった。そのため、個人的には、各精神科医の裁量(主観)に委ねられているような気がしないでもなかった。
それはともかく、最大の問題は、この薬によって、いわゆる鬱のような症状が現われたことだ。要するに、やる気が起こらずに、寝転ぶことが多くなった。統合失調症患者の中では、もしかすると早い方なのかもしれないが、昨年度から病院に行かないようになって、動く気力が回復した。
拙著を読んでいただければお分かりのように、博士論文が認められなかったという個人的事情も影響して、脳科学や客観性という話になると、妙に腹立たしくなってくる。笑われるかもしれないが、私の出版は、ゴッホになろうという意思表示であった。
ちなみに、「若者の教祖」と呼ばれた尾崎豊は、高校中退と同時に、歌手デビューを飾ったと聞いたことがある。先に述べた昨年度に行った理由は、そういった「表現者」たちに惹かれるところがあったからこそなのだ。
動けなかった時は、自分を惨めに感じたものだ。精神科医からは、睡眠が重要なポイントになりますと言われて、睡眠促進剤みたいなものをもらっていた。しかし、動けないから眠れないのであって、どうすりゃ動けるようになるのだという問答で、袋小路に陥っていた。
本の出版と断薬によって、吹っ切れたのか、最近はよく動き、早めに就寝できるようになった。
さて、休日の本日、歩いて買い物に行った途中で、野球部で一緒だった同級生を見かけた。彼は、走っていた。すれ違ったが、彼は気づかなかった。当時以上に健康的で、体格が良くなっているように見えた。
聞いたところでは、一軒家を建てて、妻子を養っているらしい。体力が基礎なのだろう。自称「表現者」は、ようやく歩き始めたところだ。